2015年3月15日日曜日

APUで気づいた大切なこと

末っ子の空っぽ
大阪府豊中市の豊田家に末っ子として生まれた私は、転勤族の家庭の一員として日本の各地を幼少期は転々としました。割と新しい環境で友達をつくるのは得意となり、学校が変わり、いちから友達をつくるのは苦ではありませんでした。しかし、末っ子として兄がいた私は、「兄の通ってきた道を通る」弟でしかありませんでした。兄が小学校で野球を始め、自分も始める。兄が中学でギターを始めて、自分も始める。「どこで何をしようが、どうでも良い」ような気がして、自分の選択で何かを決断することはありませんでした。まさに空っぽの感覚でした。反抗期が来たときも、特にこれといった自分の頑固な意見も無いまま、ただ反対をしたい欲が生まれていました。高校2年生の時にアメリカのカンザスへ交換留学に行くまでは、それで良いと思っていました。
高校2年生の留学時に、アジア人として仲間はずれにされ、Ipodを盗まれ、友達が出来なかった時に、始めて自分の「無力さ」を実感しました。それまで、なんとなく用意されてきた道を進んでいたのが、アメリカでのその経験によって「空っぽ」では何も出来ないことに気付きました。最初はとても居心地が悪く、ただただ黙って耐えていましたが、少しずつ自分を表現していきました。「空っぽ」だったのが、留学時が自分の中で「こだわり」みたいなものが芽生え、自分の価値観が形成され始めた時期だと今ではとっても分かります。そんな末っ子で青二才の自分がAPUに入ったのが、2011年の春でした。その時は髪がもじゃもじゃでした。

「受容する」「受容してもらう」
世界75カ国、地域からの国際学生約2700人と国内学生3100人、合計約5800人の超国際的環境であるAPUは、日々楽しい「異文化体験」と「国際交流」に溢れています。そんななか、私はある「人と人との繋がりにおいて大切なこと」に気付きました。それは、「受容する」ことと、「受容してもらう」ことです。そのなかでも、「受容してもらうこと」はAPUでこそ感じることのできる感覚なのではないかと思います。これは国際的な環境に限らず、日本人同士の同国籍間でもそうだと思います。
「受容する」ということは、異なる文化を知り、感じ、受け入れる(好きになる)ことです。例えば、地元でタイ料理屋さんを見つけて、初めて味わう新しい味に感動し、タイ料理が好きになれば、それはタイ文化を「受容する」ことになります。また、K-POPを聴いて日本に無いメロディに感動して、K-POPが好きになるのも1つの例です。これはAPUの環境のみならず、たくさんの国の文化に触れる機会が増えた今、いくらでも起きていることでしょう。
しかし、「受容してもらう」ことはそんなに簡単なことではありません。それは、自分の文化を「受け入れてもらう。知ってもらう。吸収してもらう。愛してもらう」ことです。例えば、私は大阪出身だということで、日本の文化、大阪の文化を深く知ってもらいたいと思い、自分の家にたくさんの国際学生を招き、おおよそ100人の友達がホームステイをしました。(母親、父親の計算によると)
母の手づくりの実家のお好み焼きが一番美味しいということ、吉本新喜劇のように大阪には日常にお笑いの文化が深く浸透していることなど、色んな日本の要素を紹介し、楽しんでもらうことで、彼らはもっと日本を好きになってくれました。私の家族ともとても仲良くなり、大阪が大好きな街だと言ってくれました。マレーシアの友人は、大阪滞在後、「次はTOYODA FAMILYに故郷をみてもらいたい」と行ってくれるようになり、家族みんなでマレーシアに旅行にも行きました。「受容する」こと経て「受容してもらう」ことで、国籍や文化を超えた「繋がり」となり、「国際理解」なんてものを超えた「思い」がそれぞれに生まれます。APUという環境からこの「受容する」ことと、「受容してもらう」運動家がどんどん増え、小さな「繋がり」が少しずつでももっと増えたら、国同士の相互理解も難しい問題では無くなるのではないかと思います。
 別府を楽しむ、具体を楽しむ
APUが位置する別府は、山と海に挟まれた日本の人気観光地、温泉地ですが、そこはかつてのバブル期を代表する繁華街、地方の暮らし、また温泉地の雰囲気がバランスよく共存していて、なんとも言えない風情のある町です。 まずなんといっても「温泉」が日常的に楽しめるのが魅力です。日本には「裸の付き合い」という言葉がありますが、まさにその通りで、温泉に入れば服を脱ぎ、気持ちの面でも着飾らず、堂々と正直に話す場となります。よそから来た人々であるはずのAPU生を、温泉を共に愉しむ仲間として受け入れてくれる別府市民の方々には、いつでも感謝感謝です。 日本以外の国では、温泉の文化がほとんど無いことから、あまり入りたがりませんが、日本人として「裸の付き合い」の文化を教えてあげることで、「真っ裸になる恥ずかしい儀式」から、「日本の人の人の付き合いの文化」ともっと魅力的になると思います。 温泉には「共有地」ならではの規律、ルールがあり、「公共」の場での人々の責任を日常的に感じる場で、日本の人と人の繋がりにおける本音と建前を象徴するコミュニティーが温泉なのではないでしょうか。 APUの多くの学生は、大分県外から来た学生であることから、皆にとって別府はアウェイのフィールドです。だからこそ、それぞれ支え合い助け合う文化が強くあります。例えば、気持ち悪いほど本気で誕生日を祝いあったり、食べ物を当たり前に共有します。別府という「大きな屋根の下」で一緒に家族のように住んでいる感覚です。 別府市民の方々との繋がり方は、祭り、アルバイト、イベントなど様々ですが、温泉は日常に溶け込んだ一番身近な「出会いの場」であると思います。みんなEnjoy 温泉! ちなみに私は明礬温泉地のえびすや旅館という素晴らしい温泉旅館でアルバイトをしました。日本の観光産業の拡大が予想されるなか、日本を代表する温泉地の温泉業に携わるのも良い経験かもしれません。

 全裸になる
先ほど、温泉で全裸になる話をしましたが、これはまた違った意味での「全裸」です。 APUという大学は、日本人学生に対しては「積極性」「能動性」などを学生に求めています。日本人の多くに欠けている性質だと世界の国々から認識されています。 一年生の時から、ワークショップと呼ばれるプレゼンテーション、グループワークなどの積極性を鍛える学習方式、アクティブラーニングが採用されています。確かにそれらの授業を通して、プレゼンテーション、グループワークの能力は格段に上がり、自信もつきます。人前で発表をすることが上手になり、APUの求める、「グローバル人材」像が皆に映り出てきます。 しかし、私はその「グローバル人材」っぽさを纏うだけでは、どうにもならないのではないかと思います。これはどういうことかと言うと、そういったアクティブラーニングの場では個が注目されず全体として良ければ、全体として褒められてしまうのです。つまり、「なんとなく」やり過ごすことが出来ます。 APUでやはり大切なのは、組織やグループという「全体感」のもろい鎧で自分を守るのではなく、個人の弱さを認め、「全裸」になり、自らの知識や経験で鎧をつくりあげることが大切です。 「全裸」になることは、恥をかくし、きついし、自分が嫌いになります。しかしその悲観的体験は、自分をものすごく強くします。 その体験をしたのは、私の場合は、「安藤百福奨学金の個人プレゼンテーション」と「卒業論文」です。それは本当に「全裸」になる感覚で、自分の全てをさらけだします。個人で評価され、恥をかき、自らが学び、経験し、強くなっていく。 大学生は、社会の構成員の中でもまだまだ恥をかくことのできる、青二才の時期です。 APUという国際環境で、FacebookinstagramLikeの数、またはグループワークの一員として強がるのではなく、「全裸」体験を通して、自分の弱さを認め、自分を突き詰める様な、『自分の弱さを認める強さ』を経験することが、大学という場での成長なのだと私は思います。
 APUの面白さ


『変人』が集まるAPU。それはれっきとした事実です。 私は大阪の公立高校に通っていましたが、その時感じたのは、だいたい90パーセントは人間で、10パーセントは変人だなあという感覚です。それは、10パーセントの人が特に人と人との関係性で目立っていたということです。その目立っていた理由は、人と違うことをしていたからだと思います。しかし、APUは、驚くべきことにみんな『変人』です。それは、皆がそれぞれ違った人生背景、家庭環境、文化、国籍を持つからであり、また同時に、「日本人にとってのスタンダード」が普通では無くなり、「APUの国際環境の独自のスタンダード」が生まれます。これは、決められた考え、価値観が認められるのでは無く、どんな考え方も魅力的になる環境です。例えば、日本では大学に4年間通い、就職活動をして、企業に勤めるのが「良いこと」とされている感覚を覚えます。しかしAPUは違う。そもそもの社会システムを疑い、自分も疑う感覚を持っています。それぞれがどんな人間なのかを試行錯誤しながら突き詰めていき、自分の価値を置くことを探ります。 簡単に言えば、流されることなく、自分の決めた選択を堂々と話します。それぞれが刺激しあい、尊敬しあい、ぶつかり合って、落ち込み合う。助け合って尊敬しあう。学生同士がとても親密で、家族のようです。 卒業生は皆、「別府に戻ると、よし頑張ろうと思える。」と言います。 厳しく、楽しく、帰りたくなる環境がAPUにあって、それは様々な国籍を持つ学生、別府市民の方々、立命館アジア太平洋大学の教授、職員の方々がバランス良く構成し、面白いように「唯一無二の環境」がそこに成り立っているからだと思います。 APUに入れたことに感謝。 出会えたみんなに感謝。 ありがとう! そして「will」を通して、自分を振り返る機会をくれたけんぞーさん!ありがとう!

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